アメリカのヒップホップ歌手Eminem(エミネム)の歌は、家族問題が気になる人の心に響きます。
私がエミネムの歌に出会ったのは、エミネムの主演映画「8 mile」が公開された頃(2003年ごろ)。「Cleanin’ Out My Closet」を聞いて衝撃を受けました。
エミネムは不景気のデトロイトで極貧の中で育ち、家庭環境には恵まれませんでした。そんな生い立ちが歌詞にも反映されています。
(f**kみたいな部分は本筋とずれる気がするので上品めに意訳して紹介します。)
going through public housing systems, victim of Munchausen’s syndrome, my whole life I was made to believe I was sick when I wasn’t ’til I grew up
公営住宅を転々として育ち
ママのミュンヒハウゼン症候群の犠牲になった
大人になるまでずっと、私は病気でもないのに自分が病気なんだと思い込まされてきた-「Cleanin’ Out My Closet」
ミュンヒハウゼン症候群とは周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり故意に身体を傷つける精神疾患で、この歌詞では近親者を病気に仕立て上げる代理ミュンヒハウゼン症候群を指していると思われます。
辛い環境で育ったエミネムのことを思うと、聴き手の心までヒリヒリ痛んできます。でも、エミネムのすごいところは、泣き寝入りでなく家族問題を隠さないところ。エミネムと母親の確執は長年にわたっていて、歌詞の内容が名誉棄損に当たるとしてエミネムは母親から裁判で訴えられています。(ちなみに裁判はほぼエミネム側の勝利で終わったとのこと)
see what hurts me the most is you won’t admit you was wrong, bitch, do your song, keep tellin’ yourself that you was a mom, but how dare you try to take what you didn’t help me to get, you selfish bitch, I hope you fuckin’ burn in hell for this shit, remember when Ronnie died and you said you wished it was me, well guess what, I am dead, dead to you as can be…
ママが自分の間違いを認めないのが、いちばん私を傷つける
自分がちゃんとママだったって勝手に言っていればいい
なんにも助けてくれなかったくせに、なんで私がやっと手に入れたものを奪おうとするのかな、勝手だよね
ママは地獄に落ちて火に焼かれればいい
ロニーが死んだとき、私が死ねばよかったのにって言ったよね
そういうことだよね、ママにとって私はもう死んだも同然の子…-「Cleanin’ Out My Closet」
その後、エミネムは40代になって、母親が心臓病にかかったのを機に母親と和解したと言われています。(この歌はもうライブで歌われることはないそうです)
…いったいどういう心境の変化だったのか、気になる所です。
私にはエミネムほどストレートに親をディスる気力というか余力はなかったけれど、エミネムの歌には、私の人生を変えるパワーがありました。外の世界と関りを持ち、自分の状況や気持ちを外の世界に向けて話していこうと考えるきっかけになりました。
あの頃から20年近く経ち、ようやく自分の気持ちを言葉にできるようになってきました。