A. 今後の自分の人生を豊かに過ごすために、奴隷扱いから抜け出す努力をしませんか。
毒親との関わりでは、面倒だからとりあえず親の言うとおりにしておこう…という思考パターンに陥りがちです。親に泣き叫ばれたり暴力をふるわれたり、ひどい言葉で罵倒されたりすると、もはや子供は思考力も判断力も奪われてしまい、親の言いなりになってしまいます。
そんな中であえて言いますが、私は、毒親への対応としてそのような方法はおすすめしません。なぜなら、とりあえず親の言うとおりにしていればその場をしのげるかもしれませんが、親を完全に満足させることは不可能だからです。そもそも、毒親の言動は矛盾しているのです。
例えば、
・有名企業に就職しろというのに、田舎の実家から出るなと言う。
・自慢になるような仕事をしろと言うが、実際に仕事を始めようとすると妨害する。
・結婚に反対していたくせに、後になって結婚していないことを責められる。
・常に文句を言われるが、変えるべき方向性が示されるわけでもない。
…etc.etc.
結論として、毒親はいつまでも子供の自立を妨害しながら手元に置きたいのです。自分で考えることをあきらめて親の言うとおりにしていたら、あなたの人生は、自分のものにならないまま終わってしまいます。
今の時代、日本人の平均寿命は80歳を超えています。親が死ぬまで従い続けたとしても、親の寿命で子供が解放されるころには、年齢は50代を超えてしまいます。その頃までに、いったい子供はどれだけの犠牲を払えばよいのでしょうか。住む場所も結婚も仕事もあきらめて、後になって親を恨んでも、何もいいことはありません。
現状をあきらめて思考停止するのではなく、むしろ、あとで親を恨まなくて済むよう、冷静に自分の道をゆくのが前向きな行動といえるのではないでしょうか。就職や結婚を反対されたとしても、理由に納得がいかなければ、あきらめる必要はありません。
無理難題を言う親の怒りに、実体はありません。
これは私が個人的に感じることですが、毒親が敵だと思って戦っているのは、「自分の人生はこんなものではないはずなのに」という怒りです。
・自分が入れなかった学校に子供を通わせてリベンジしなくてはいけない。
・自分の時代には仕事も結婚も選択肢がなかったのに、子供が自由にするのは許せない。
・自分ができなかったことを子供に許せば、過去の自分がみじめでかわいそうだ。
…親の気持ちを言葉にしてみれば、こんな感じでしょうか。
いろいろと子供を振り回したところで、親自身が自分の人生を見つめることから逃避している限り、その場その場で親が言うことに従っても、親の欲求が満たされることはありません。
私の場合は、親に振り回されたあげく、そんなことは頼んでいない!と罵倒されるのがパターンでしたが、「あとで行き違いが起きないように、連絡は書面に残そうね~」「文句を言うだけでなくて、次にどうしたら状況が良くなるのか考えるようにしようね~」と、動じずに言えるようになりました。ビックリな発言や手紙なども、すべて記録して、後で矛盾があったら指摘できるようにしています。結果として親の言動が改善したわけでもないですが、親の言うことに従うかどうかを決めるのは自分だ、と決めたことで気持ちが楽になりました。
親がおかしなことを言い始めたら、その後ろにどんな怒りや悲しみが隠されているのか、考えてみましょう。そして、子供や家族への支配が本来の問題からの逃避であることをきちんと指摘しましょう。
理不尽や悪意に負けそうになった時ににおすすめの作品
「泣き虫先生の7年戦争 スクール・ウォーズ」(1984年放映のドラマ)
荒れた高校の弱小ラグビー部の顧問になった元ラグビー日本代表の新任教師が、さまざまな問題に真正面から取り組んでチームを全国優勝へ導くというノンフィクション作品です。
ラグビーに注目が集まる今日この頃、普通のスポーツものとして見ても楽しいのですが、滝沢先生や生徒たちが厳しい状況に立ち向かう姿も見ごたえがあります。
ドラマの中では、「その発想はなかった!」というような解決法が登場人物によってあみ出されていきます。ネタばれにならない限りで書くと、行方不明になった仲間を探す方法、親に絶望して自殺を考えた子の話、親の意向でラグビーをやめさせられそうになった子の行動など、見ていて勇気づけられるようなシーンがあります。
モデルになった先生も決して順風満帆な人生を歩んだわけではなく、いったんラグビーをあきらめたものの再起して別の学校に編入学したという経験をお持ちとのことです。
毒親育ちの私たちは、難しい状況となったときに、解決方法を考え出すのが得意ではありません。「思い込みと事実を分ける」でも書きましたが、子供の頃から自分で冷静に判断する訓練をしていないので、ものごとを多面的に見て解決方法を導き出すということがなかなかできません。
毒親に完全服従する、もしくは毒親を暴力で黙らせる、以外の3つ目の選択肢を思い起こすためのパワーになりそうな作品です。余談ですが、和田アキ子と梅宮辰夫もいい味を出しています。(そして若い!)
文庫版もあります。「スクール・ウォーズ―落ちこぼれ軍団の奇跡」 (光文社文庫)